エチレンが ERS1 などのエチレン受容体に結合すると、エチレン受容体-TER クラスターが不活性型に変化する。これにより EIN3 のユビキチン化を抑制する EIN2 の働きが促進され、EIN3 がユビキチン化されなくなる。ユビキチンされていない EIN3 が蓄積し、エチレン初期応答遺伝子群の転写を促進し、エチレン応答が開始する。
エチレン応答関連の遺伝子とその働き
ERS1 |
ethylene response sensor 1
エチレン感受性は ETR1, ERS1, ERS2, ETR2, EIN4 の 5 つの遺伝子によって制御されている。ETR1 や ERS1 などのエチレン受容体は N 末端に膜貫通ドメインを持ち、エチレン結合サイトはこの膜貫通ドメイン上にある。シグナル伝達はその反対側の C 末端で行う。
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CTR1 |
constitutive triple response 1
CTR1 はエチレン応答パスウェイにおいて負の制御を行う。エチレン濃度が増えることにより、ETR1 などのエチレン受容体の発現量が増加し、ETR1 の C 末端が CTR1 と相互作用することにより CTR1 を不活性化する。これにより CTR1 に抑制されていた MKK9, MPK3/6, EIN3 などが関連する下流のシグナル伝達系が解除され、初期エチレン応答遺伝子群が発現する。
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EIN3 |
ethylene-insensitive 3
EIN3 はエチレン応答に対して正の制御を行う。EIN3 が欠損した植物ではエチレン応答性が低下し、EIN3 過剰に発現する植物ではエチレンに対して過剰反応を行うことが報告されている。このほかに EIN3-like (EIL) 転写因子(EIL1, EIL5 など)も EIN3 と同様にエチレン応答に関与していると考えられている。 エチレン受容体がエチレンと結合することで CTR1 を不活性化する。続いて CTR1 により抑制されていた MAPK カスケード反応が開始し、EIN2 の蓄積をもたらす。EIN2 は EIN3 や EIL1 などのユビキチン化を抑制する。これにより EIN3 や EIL1 はユビキチン化されずに転写因子として、初期エチレン応答遺伝子群の発現を促進する。エチレンが存在しないときは、EIN3 はユビキチン化されるため、26S プロテアソームにより分解される。
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EBF1 |
EIN3 binding F-box 1
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