トランスクリプトームショック

親種のゲノムが異質倍数体に取り込まれることで、遺伝子発現に変化が現れる現象をゲノムショック(genome shock)あるいはトランスクリプトームショック(transcritptome shock)と呼ぶ [15739260]。トランスクリプトームショックは、異質倍数化の過程で起きたエピジェネティックあるいはジェネティックな変化によって引き起こされると考えられている。

エピジェネティックな変化

エピジェネティックな変化として、例えば、

  1. 片方の親種のゲノムから発現する DNA メチレーション酵素が、他方の親種のゲノム配列をメチレーションし、遺伝子の発現を抑制したり
  2. 片方の親種のゲノムから発現する転写因子が、他方の親種のゲノム上にある転写促進領域に結合し、遺伝子の発現を促進できたり
  3. 片方の親種のゲノムから作られる miRNA が、もう片方のゲノムから転写される転写物にも作用し、転写物の分解を促進したり

することが明らかとなっている。

異質倍数化した直後からエピジェネティックな変化が見られるため、誕生してまもない異質倍数体の遺伝子発現は、すでに親種と異なることがある。

ジェネティックな変化

ジェネティックな変化として、例えば、DNA に変異が生じたり、染色体の転移や欠損などが起きたりすることで一部の遺伝子の機能に変化が現れることがある。ジェネティックな変化は、進化の過程において、少しずつ、異質倍数体の遺伝子発現に影響を及ぼしている。実際に、2〜7 百万年で重複遺伝子の半分が消失すると予測されている。このようなゲノム間の相互作用の結果として、異質倍数体の遺伝子発現は、親種と異なるようになったと考えられる。

References