Triangle of U は Brassica 科の植物の 2 倍体と 2 倍体同士の異種間交雑によって誕生した異質倍数体との関係を説明するために用いられている。トライアングルの 3 つの角には、A ゲノムを持った B. rapa、B ゲノムを持った B. nigra、および C ゲノムを持った B. oleracea が置かれている。この 3 種の 2 倍体の異種間交雑によって 3 種類の異質倍数体が作られる。この関係を最初に提唱した Nagaharu U(本名は Woo Jang-choon)にちなんで Triangle of U とよばれるようになった。
Brassica 科の植物は農作物として非常に有名である。白菜、キャベツ、ブロッコリー、アブラナなど多くの野菜が Brassica 科に含まれている。
B. rapa | 2n = 2x = 20 | AA | 白菜、アブラナ、水菜、小松菜など |
B. nigra | 2n = 2x = 16 | BB | クロガラシなど |
B. oleracea | 2n = 2x = 18 | CC | キャベツ、ケール、ブロッコリーなど |
B. juncea | 2n = 4x = 36 | AABB | カラシナ、高菜、ザーサイなど |
B. carinata | 2n = 4x = 34 | BBCC | アビシニアガラシなど |
B. napus | 2n = 4x = 38 | AACC | セイヨウアブラナなど |
B. juncea のゲノム
B. juncea は B. rapa と B. nigra の異種間交雑によって作成された異質倍数体である。B. juncea var tumida が持つ A ゲノムと B ゲノム上の遺伝子を、祖先種 B. rapa の A ゲノムと B. nigra の B ゲノム上の遺伝子と比較した結果、B. juncea var tumida の A ゲノムと B ゲノムはそれぞれ 500 前後の遺伝子が欠損していることが報告された(Yang et al., 2016)。また、B. juncea var tumida の A ゲノムと B ゲノム上に存在する同一遺伝子(ホメオログ)の発現について調べた結果、全ホメロオグのうち 8.0% のホメオログは A ゲノムから優先的に発現し、8.2% のホメオログは B ゲノムから優先的に発現していることが明らかとなった。これら、発現比率に偏りのあるホメオログは、KEGG エンリッチメント解析の結果により、主に代謝パスウェイと植物ホルモン応答パスウェイ上で機能するものであることが示された(Yang et al., 2016)。
B. juncea に様々な変種があり、製油用と食用に分けることができる。製油用と食用の変種の A ゲノム上の SNPs などの情報に基づいて、クラスタリングした結果、製油用と食用 B. juncea の変種が持つ A ゲノムは同じ起源であることが明らかとなった。このことから、B. juncea は異種間交雑により作成されたのちに、製油用と食用に選別されて栽培されるようになったことを示唆している。
References
- The genome sequence of allopolyploid Brassica juncea and analysis of differential homoeolog gene expression influencing selection. Nat Genet. 2016, 48(10):1225-32. DOI: 10.1038/ng.3657 PMID: 27595476