遺伝率

表現型は遺伝要因と環境要因によって決定される。遺伝率は、表現型のうち遺伝要因が示す割合である。ある表現型の遺伝率が 100% に近づけば、その表現型はほぼ遺伝によって決定されるということになる。例えば、ABO 血液型は環境の変化に関係なく完全に遺伝によって決定されているので、ABO 血液型という表現型の遺伝率は 100% といえる。一方で、身長は、複数の遺伝因子によって決定されると同時に、子供のときの運動量や食事などによっても決定される。このため、身長という表現型の遺伝率は、100% ではないといえる。

表現型 (phenotype) P は、遺伝要因 (genotype) G と環境要因 (environment) E の効果の和 P = G + E として表せる。遺伝と環境が独立的な因子と仮定したとき、表現型の分散 VP は、遺伝要因の分散 VG と環境要因の分散 VE の和として表せる。すなわち、VP = VG + VE

このとき、広義の遺伝率 H2 は次のように計算できる。

\[ H^{2} = \frac{V_{G}}{V_{P}} \]

また、狭義の遺伝率 h2 は次のように計算できる。

\[ H^{2} = \frac{V_{A}}{V_{P}} \]

遺伝分散 VG はさらに、相加的遺伝分散 VA、優勢分散 VD、および相互作用分散 VI に分解できる。

\[ V_{G} = V_{A} + V_{D} + V_{I} \]

狭義の遺伝率は、遺伝分散のうち相加的遺伝分散 VA のみを利用して計算した遺伝率である。