アミノ酸はアミド基とカルボキシル基の両方をもつ有機化合物である。生物学では特にタンパク質を構成するアミノ酸に限定する場合が多い。タンパク質を構成するアミノ酸は α アミノ酸である。カルボキシル基が結合している炭素(α 炭素)にアミド基も結合し、化学式は RCH(NH2)COOH である。R は側鎖とよばれ、その性質によってアミノ酸は親水性、疎水性、塩基性、酸性などになったりする。
タンパク質を構成するアミノ酸はおよそ20種類知られている。これらのアミノ酸には 1 文字略号と 3 文字略号が付けられている。タンパク質立体構造データベース(PDB)に保存されているデータは略号が用いられている。例えば、立体構造を保存している PDB ファイルは 3 文字略号を、アミノ酸残基を保存している FASTA ファイルは 1 文字略号を利用している。
アミノ酸はその化学的性質に基いて親水性(極性)と疎水性(非極性)に大きく分けることができる。親水性アミノ酸の中に酸性アミノ酸はアスパラギン酸とグルタミン酸だけである。塩基性のアミノ酸はリシン、ヒスチジン、アルギニンである。
多くのアミノ酸は生体内で合成されるが、生体内で合成できないアミノ酸もある(、あるいは微量しか合成できないアミノ酸)。このようなアミン酸を必須アミノ酸という(下図の * が付いているアミノ酸)。必須アミノ酸は生物種によって異なる。ヒトの必須アミノ酸は 9 種類あることが知られている。トリプトファン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジンの 9 種類である。これらのアミノ酸は食事などによって摂取する必要がある。
アラニン | ALA | A | アラニントランスアミナーゼにより、グルタミン酸のアミノ基がピルビン酸に転移して生合成される。 |
アスパラギン | ASN | N | アスパラギンシンテターゼにより、アスパラギン酸から合成される。 |
システイン | CYS | C | メチオニンとセリンから生合成される。 |
グルタミン | GLN | Q | グルタミン酸から生合成される。窒素固定に関わる重要なアミノ酸である。 |
グリシン | GLY | G | 不斉炭素を持たず、生体を構成するアミノ酸の中で唯一立体異性体が存在しない。 |
イソロイシン | ILE | I | 2-オキソブタン酸から生合成される。 |
ロイシン | LEU | L | ヒトの必須アミノ酸。タンパク質の生成と分解に関与する。 |
メチオニン | MET | M | ヒトの必須アミノ酸。植物や微生物ではアスパラギン酸とシステインから生合成される。 |
フェニルアラニン | PHE | F | ヒトの必須アミノ酸。植物や微生物ではシキミ酸経路により、プレフェン酸から生合成される。 |
プロリン | PRO | P | 肝臓と小腸で生合成される。糖原性を持つ。α 炭素にはアミノ基がなく、イノミ基が結合している。 |
セリン | SER | S | 解糖系の中間体である 3-ホスホグリセリン酸により生合成される。 |
トレオニン | THR | T | ヒトの必須アミノ酸。植物や微生物ではアスパラギン酸から生合成される。 |
トリプトファン | TRP | W | 必須アミノ酸。糖原性、ケト原性を持つ。ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の基質である。 |
チロシン | TYR | Y | 動物ではフェニルアラニンより生合成される。植物や微生物ではシキミ酸経路により生合成される。 |
バリン | VAL | V | ピルビン酸から生合成される。 |
アスパラギン酸 | ASP | D | クエン酸回路の中間体であるケトグルタル酸から生合成される。 |
グルタミン酸 | GLU | E | クエン酸回路の中間体である 2-オキソグルタル酸から生合成される。 |
アルギニン | ARG | R | クエン酸回路の中間体であるケトグルタル酸から生合成される。 |
ヒスチジン | HIS | H | フルクトース、ホルマリンとアンモニアから合成される。 |
リシン | LYS | K | アスパラギン酸から生合成される。 |