水田土壌は、畦畔を作り水で囲い、土壌を練り返しして泥水に混じったシルトや粘土で土壌の隙間を埋めて、水をためることが作られる。湛水することによって、Fe(OH)3→Fe(OH)2+OH- と CO2+H2O→CO32-+2H+ などの反応平衡により、土壌 pH が 6.7-7.0 に落ち着く。
湛水することで、植物にとって様々な利点をもたらす。
- 水がイネの生育の制限因子にならない。
- 湛水により、無機物イオンが溶け出し、植物に吸収されやすくなる。
- 塩類障害を受けにくい。
- 水の比熱によって地温の調節ができる。
- 好奇性土壌病原菌に対して静菌作用が働くため連作が可能である。
- 貯水池として土壌侵食を防止。
土壌が湛水により還元状態が作られます。これにともなって、田面水下の土壌はいくつかの層にわかれます。
表面酸化層 | 湛水当初は還元状態に置かれているが、湛水後1ヶ月経過すると、土壌中の有機物が分解され、分解されやすい有機物が徐々になくなると微生物の酸素消費量も減少し、田面水中の溶存酸素が土壌の最表面を酸化し、土壌は黄褐色に呈色するようになる。 |
作土層 | 作土層の上部は酸化されるが、下層は還元状態に置かれたままで、Fe(II) に由来する青灰色を呈する。 |
すき床層 | 作土層の直下にありやや硬い土層である。 |
酸化的下層土 | 湛水の影響が弱く酸性的な条件である。作土層の還元状態で溶けた Fe2+ や Mn2+ が再び Fe3+ や Mn4+ に酸化され Fe2O3、MnO2 として沈殿し、酸化鉄の斑紋やマンガン結核などの特徴的な形態を示す。 |
水田土壌の還元過程の初期と後期に次のような化学反応が見られる。
Eh(V) | E0(V) | 反応 | 物質変化 | ||
初期 | +0.5~+0.6 | 1.23 | 酸素呼吸 | O2消失 | 好気性細菌の代謝が活発 |
1.25 | 硝酸還元 | HNO3消失 | 脱窒細菌の代謝が活発 | ||
1.24 | マンガン還元 | Mn2+生成 | |||
1.06 | 鉄還元 | Fe2+生成 | Fe2+により土壌が青灰色に呈する | ||
0.30 | 硫酸還元 | H2S生成 | S2-とFe2+により黒色沈殿ができる | ||
後期 | -0.2~-0.3 | 0.17 | メタン発酵 | CH4生成 | 炭酸や酢酸が基質となってメタンが生成される |